施設見学 ベタニヤホーム~      社会学部  久保教授、(斉藤施設長)

  ・社会福祉法人ベタニヤホームは母子生活支援施設である。関東大震災の後、被災母子を保護するために、スタイワルト宣教師

   と本田伝喜師がスペイン公使館跡地にバラックを建てて開始した。墨田区の江東橋に幼稚園を併設する母子収容施設と常設

   した。東京大空襲で全焼したが、パウルスア宣教師が再建して、ベタニヤ母子寮、菊川保育園として認可され開設した。

  ・昭和60年に緊急一時事業を開始した。平成10年には母子生活支援施設ベタニヤホームに改称した。平成13年に墨田区の要請

   で菊川保育園両国分園を開設する共に、母子・女性緊急一時保護事業実施施設として事業を開始した。平成14年に墨田区の

   委託を受け、すみだ子育て相談センターの運営管理にあたる。平成19年にはこひつじ保育園を開設した。

  ・ベタニアホームは鉄骨コンクリート5階建てで、20世帯60人が利用できる。菊川保育園は定員は140名、富士見保育園は定員は

   100名、こひつじ保育園は定員は100名である。ベニタヤホームおひさま保育室は1歳児と2歳児が対象で、定員は20名である。

  ・ベニタヤホームはキリスト教の隣人愛の精神に基づいて運営されている。母子生活支援施設は昭和22年に制定された児童福祉

   法第38条に定められた施設である。18歳未満の子どもを養育している母子家庭か、何らかの事情で離婚の届出ができないなど、

   母子家庭に準じる家庭の女性が子どもと一緒に利用できる施設である。全国には272施設があり、4056世帯、10608人が利用して

   いる。利用者は年々減少しており、時代に合わなくなっている感じである。若い人には監視されていると感じる人が多い様子である。

   利用者には夫のDVから逃げ出している女性が5割近くと多く、施設をPRすることは難しい。また、夫のDVから逃げている女性を

   同じ区内で保護すること自体少し無理がある感じである。施設には仕事や育児、健康、家族関係、将来の生活設計など、色々

   ことを相談できる職員がいる。特に、精神的ケアも大事になっている。

  ・施設は公立民営と民立民営があり、公立公営はなくなった。23区では千代田区と中央区、文京区には母子生活支援施設はない。

   入所されたお母さんの就労状況61%労しているがその内の70%が非正規雇用の不安定就労である。平均就労収入は

   156万円であり、5万円から10万円の人が多く、厳しい生活をしている。

  ・ベニタヤホームの職員数は13名で、5名が非常勤である。所員には宿直がある。定員は20世帯、60名であるが、在所者は14世帯

   34名であった。最近は中央区や文京区からの受入れも行っており、現在は19世帯まで回復した。部屋の利用状況は、2世帯用

   居室が6畳が8家族、6+4.5畳が2家族である。3に世帯では6畳が1家族、6+4.5畳が2家族、5人家族は6+6+4.5畳が1家族である。

   在所期間は2年強で、都営住宅が当たると出ていく人が多い。職業は7人がサービス業で、すべてがパートである。生活保護世帯

   9家族である。児童扶養手当と自動育成手当を受給しているのが9世帯15人である。最近は外国人が増えている。

 「一言」墨田区の母子生活支援センターを見学した。外部から見るとしっかりしたビルで、屋上にドーム形の部屋があり、十字架が

      飾られていた。内部も比較的綺麗にしていたが、DVの男性から守る必要があるのか、開放的な感じは少なかった。熱心に

      施設長から説明を受けた。当初はキリスト教の宣教師が設立して運営していたのかも知れないが、今は区の施設的な感じ

      になっていた。今の施設では若い人には適用しなくなっていると説明されていたが、都営住宅が当たると出ていく人が多い

      のなら、将来的には、都営住宅と一体的に運営した方が良いのではないかと思った。