ワイン市場と法規制 法学部 蛯原教授
・2000年に明治学院大学に赴任して、2005年~2006年に南仏のモンペリエに滞在した。モンペリエは一大ワイン産地でワイン法を
勉強した。小諸市ではワイン法のシンポジウムを開催した。小諸市にはマンズワインの工場があり、ワイン特区を申請している。
ワインは自分で飲むワインでも作る時は製造免許が必要になる。酒造法の免許の条件は年間6000Lの製造計画が必要である。
ワイン特区にすると年間の製造計画が2000Lで良いことになる。シンポジウムではワイン産地形成のための法と政策の話をした。
・北海道では余市やソラチ(岩見沢市)が注目を集めている。日本で唯一の「ワイン法」ゼミでは山梨に行ったり、恵比寿のサッポロ
ビールのワイン製造技術などを見学している。新潟県上越市の岩の原ワインは120年の歴史があり、高いワインを作っている。
・フランスの法律では、ワインは生ぶどうだけを原料として、アルコール発酵させた飲み物と定義している。ワインは品種がたくさん
あり、同じ品種のワインでも価格が全く異なる。例えば、チリ産の2013年のシャルドネの750mlの価格は490円である。フランスの
ブルゴーヌ産のシャルドネで585000円の値段のものがある。価格、品質の違いは何に由来するのか考えると、産地や造り手、
醸造方法、ヴィンテージなど色々な要因がある。自然的な要因と人的要因があり、そのために不正行為が起こってくる。不正防止
のためにワイン法が出来た。
・ワインが誕生した土地はコーカサス地方(グルジア)で8千年前に出来たと言われている。聖書では、ワインを最初に作ったのは
ノアと言われている。大洪水の後、人は初めてワインを造ったとされている。ノアの方舟伝説が伝わっているのはコーカサス地方
であり、合致している。古代エジプトでもワインは造られていて、王様の権力の象徴として飲んでいた。紀元前14世紀頃に、ツタン
カーメンの墓にワインの製造方法や製造責任者などの記録が残されている。ギリシャ時代になると一般市民も飲むようになった。
・ボルドーでは中世期からワインを造っていた。当時のボルドーはイギリスの支配地であった。その頃は、ワインは船で消費地まで
運搬していたが、ボルドー地方の人は川の運搬を止めて、上流で造っていたワインを出荷できなくして、栄えた。14世紀末には
ブルゴーニュでもブドウを作っていたが、ブルグーニュ公はガメイを禁止した。当時は、白ぶどうはシャルドネ、黒はピノ・ノワール
を奨励していた。これらのブドウは長持ちして良いワインが出来る。しかし、ガメイは量がたくさん取れるので、農家では盛んに
作っていた。ガメイはピノノワールの4倍くらい取れたが、品質は落ちるので、ガメイを禁止して、品質を守ろうとしていた。
・19世紀末に消費が減少した時期がある。アメリカから来た害虫フィロキセラにより大きな被害が出た。害虫フィロキセラはブドウの
木そのものを枯らしてしまうので、長く被害が続いた。ワインの品不足のために、輸入したり、不正ワインを製造した。フィロキセラ
対策としては、アメリカ品種の栽培やフランス品種とアメリカ品種の交配、アメリカ品種の台木にフランス品種の木を接ぎ木する
方法があった。アメリカ系のぶどうは害虫や病気には強く、量も多く取れるが、ワインにすると品質が落ちるだけでなく、変な臭い
あるので、EU法でクリントンなどは禁止された。接ぎ木では、フランス品種の味が守られて、アメリカ産の台木によりフィロキセラ
からの被害から守られるので良く使われた。
・フィロキセラへの対策が進み、ワインの生産量が回復すると、輸入ワインや不正ワインで供給過剰になった。グリフ法は1889年に
新鮮なブドウを原料にしたもの以外はワインと言わないことにした。産地呼称を保護するAOC制度が出来た。ボジョレーの生産
基準も定められている。生産基準としては、収量、天然アルコール濃度、品種である。似たようなラベルが多いが、ラベルにも格
付けの順位がある。最も高いものがGran Cruで、次の格付けのものはPremier Cruであり、その下にAOCのピラミッドがある。
生産範囲を細かく画定している。距離的には歩いて行ける距離だが、畑の斜面により区画を分けており、傾斜地の中ほどが最も
良いところで、平坦な場所は低くなっている。
・1976年にパリの試飲コンテストでフランス産がカルフォルニア産に敗れた事件が起こった。その後、フランスワインが減少している。
日本に輸入されているワインは、チリ産、イタリア産、スペインワインが増えている。チリワインは非常に安く、関税も下がっている。
イタリアワインは飲食店で多く使われている。スペインワインは欧州だが安く、スパーリングワインが強い。次がアメリカワインである。
・フランスのワイン輸出額は100億EUで、フランスの輸出で、飛行機、高級衣料に次いで、3位になっている。1980年の世界調査では
フランス人は100人中69人が日常的にワインを飲んでいたが、2010年には26人に減少した。更に、減少している。女性も37人が10人
程度に減少している。フランス国内ではワインの消費が大幅に減少しているので、輸出が重要になっている。
・ヨーロッパではワインを清澄化のために、卵を使っている場合があり、 EU法では表示が義務付けられている。卵のタンパク質が
ワインの澱を吸着するので、ワインが清澄化が出来るので、フランスで利用される場合が多い。
EU及びフランスのワイン法では生産基準法により、造られた産地表示があり、生産基準は厳しく守られている。
・スパークリングワインの輸入量が伸びている。特に、スペインのCAVAが増えている。CAVAはスペインでシャンパーニュ方製法で
生産されるスパークリングワインであり、高い品質に比べて、価格がリーズナブルで、コストパフォーマンスが良いのが特徴である。
シャンパンのボトル1本には1億以上の泡がある。ガス圧は5~6気圧で、昔は時々瓶が壊れた。シャンパーニュ地域の栽培面積は
3万4千ヘクタールで、名古屋市くらいのエリアであるが、南北は100㎞くらいある。
・私どもの考えとしては、「ワインがあれば、憂いなし」である。
「感想」ワイン法と言うので、どのような内容か気になったが、講義の大半はワインの話で面白かった。
フランスのワインの消費が大幅に減少していると言うことだが、どのようになっているか気になった。