ユニバーサルデザインと福祉機器 芝浦工業大学 花房先生
・アクセシビリティとは、すべての人のアクセシビリティを確保することで、障害者、高齢者、介護者、健常者、すべて平等に機器、環境
情報、制度などを利用できるようにして、自立した生活が送れるようにすることである。そのためには、バリアフリー化が必要である。
実現する方法としては、誰でも利用できるようなユニバーサルデザイン設計しておくことである。
・色とか動作の方向など、共通のルールにすることが大事である。扉や蛇口などでは、ピンポイントに握ったり、捻るなどは難しいため
の改造が行われている。神戸の震災で蛇口のレバーを下げると出るようにしていると物が落ちて出っ放しになったので、今では、蛇口
のレバーを上げると出るようになった。信号やリモコンでも、色覚に障害がある人は色での識別が難しいため、矢印等にする方向に
なってきた。また、視覚に障害がある人には、しゃべる機能があるとありがたいので、リモコンや携帯電話にはしゃべる機能が出ている。
・福祉機器では、個人の体格や能力に合ったものが必要であり、一人一人に合わせた設計をすることが必要である。車いすの場合は、
体格に合っていないと腰痛や肩こりなどを招くことがある。車いすの前輪は小さく硬いので、荷重が大きいと抵抗力が大きくなるので、
後輪に近いところに重心がくるようにしている。しかし、重心が車軸を通る鉛直線を越えると転倒するので、個人毎にこれらを配慮して
設計している。また、前輪と後輪の間隔が長いほど、車は回転し難くなるので、マラソン等では利用している。
・ユニバーサルデザインは米国のロナルドマースという人が提唱した考えで、適合や特殊な設計をすることなく、すべての人が使い易い
設計である。ユニバーサルデザインには7つの原則がある。誰でも公平に使えることや使う上で自由度が高いこと、使い方が簡単で
直ぐに分かること、必要な情報が直ぐわかること、うっかりミスが危険につながらないこと、身体への負担が少ないこと、接近や利用
するための十分な大きさと空間を確保する、この7つである。しかし、日本の住宅では適合しない場合もある。
・高齢者の不便さ事例としては、機能が多過ぎて覚えられないとか、表示が見にくい、操作手順が分かりづらい、容器が開けられない、
掃除機やポットなどの重くて持ち歩きにくい、携帯電話などの皮膚感覚が弱くて持ちにくい、ガスや電気を消し忘れることなどがある。
視覚障害者の不便さの事例は、化粧品や薬、食料品の容器が同じようで分からない、スイッチなどの操作が分かり難い、液晶表示や
タッチパネル方式だと分からない、弱視でガラスのドアにぶっつかるとか階段の端や段差が見づらいなどがある。聴覚障害者の不便さ
事例は、テレビの声が分からない、機器が作動しているか、終了しているか分からない、パソコンのメッセージが分からないなどがある。
車いす使用者は、ATMの操作盤に手が届かない、開き戸は使いにくい、自販機から飲み物が取りにくい、歩道の段差が困るがある。
・ユニバーサルデザインの基本的な考え方は、ハンディキャップのある人にとって使い易いものは、健常者も使い易いと考えている。
車いす用のスロープやエレベータはベビーカーや高齢者も使い易い。高さ調整が可能な家具は体格に応じ使用できる。上肢障害者
が片手で使える機器は高齢者や子供も使い易いし、自動化や楽に使えるようになる。視覚障害者に配慮した機器は暗いところでも
使用しやすく、識別しやすい。視覚、聴覚、触覚の感覚に対する情報提供を共通化することが大切である。共通品は違いに配慮する
ことで、対象者を拡大し、コストの低減が可能となる。配慮すべき事項としては、中身やスイッチの内容が分かり易くなる配慮や操作
した結果の動作が分かり易くなる配慮が必要である。また、片手、弱い力、細かい位置決めなしに操作できたり、取り扱いの説明や
アフターサービスが容易に受けられることがある。福祉機器展に行くと色々な製品が出ている。
・情報処理機器関連のアクセシビリティとしては、経済産業省から情報処理機器アクセシビリティ指針が出ており、総務省からは電気
通信設備アクセシビリティ指針が出ている。バリアフリに関しては、国土交通省ではバリアフリー新法が2006年6月に成立している。
日本工業規格(JIS)としては、高齢者・障害者配慮設計指針があり、ISO/IECガイド71(規格作成における高齢者・障害者のニーズ
への配慮ガイドライン)がある。
「感想」 先生が色々な福祉機器などをたくさん持参して、それらの製品の特長を説明してくれて楽しかった。