老人漂流社会 NHKチーフプロデューサ 板垣先生
・NHKのチーフプロデューサで、2012年にNHKで始まった番組「老人漂流社会」を制作しており、今日はこの番組について説明する。
シリーズ開始当初は独居老人が500万人いたが、その後も増えていて、現在では600万人に達している。日本人の9割が寝たきり
で死亡する人がある。また、待機老人が40万人いた。待機老人は要介護4〜5の人が多く、待っている間に亡くなっている。要介護5
の人では介護費用は最低でも20万円はかかる。介護保険では介護が受けられる時間が限られている。要介護5の人でも保険では
朝晩しか対応してくれないが、要介護5の人は朝昼晩すべてに介護が必要になり、保険以外で介護を依頼する費用がかかる。その
ため、特養介護施設を探している。独居老人の80%が一人当たりの年金が200万円以下である。安いところを見つけるため、数十
ケ所を転々としているのが実態である。国が高齢者福祉施設を作ってこなかった上に、長期入院の切り下げが相まって厳しくなって
いるのが実態である。 (テレビ番組「老人漂流社会」の前半部分を放映)
・ドラマの主人公は、80歳まで働いていたが、奥さんが5年前に亡くなった。その後、熱射病にかかり、身体が不自由になって、一人で
生活出来ないため、短期療養施設を転々とした。特養施設が見つかったが、費用が足りないので、生活保護を受けることになった。
そのため、都営住宅を退去することになり、終の棲家がなくなった。特養施設は都内の外れたところにあり、知り合いもなく、生きて
いく気力もなくなって、急速に認知症が進んだ。食べる気力もなくなり、胃ろうをつけるようになり、2週間後には亡くなったという実話
である。先生も子供のいない夫婦なので、一方が認知症になった時に、終の棲家を決められるかが心配になったとのことである。
・今の制度ではどこも不十分である。番組に出てきた大井さんは79歳まで働いていたが、年金は満額貰っても7万円にしかならない。
年金制度がつくられたのは、サザエさんの時代である。当時は、両親や子供がおり、暖かな家庭があった時代であり、時代が大きく
変わってきている。今いる600万人の一人暮らしの人は月7万円の年金で生活しなければならなくなった。年180万円以上の年金が
十分ある方の医療費が2割に上がった。この人が介護に頼ると月25万円くらいかかることになる。そのため、この人たちも生活保護
が必要になる。生活保護を受けると自治体が斡旋する介護施設に入るしかなくなる。認知症になると一人で生活出来なくなっていく。
・最低でも、成年後見人制度を使っていく必要があるが、後見人制度を使う時期が問題である。後見人になる人は裁判官等を退任した
方で、かなり年齢の人である。そのため、生涯その後見人に見て貰うことも難しくなる場合がある。後見人を頼むと毎月2万円かかる。
最近出てきているのが品川後見制度である。窓口の方が書面に残し、引き継いでいくので、亡くなるまで継続して面倒を見てくれる。
・お金を出す時は福祉の方が対応するので、安く対応して貰える。後見人の方がすべて安心できるわけではない。年間500件くらい
詐欺が起きている。特に、弁護士の中には、裁判では実績が上げられず、この分野で幅を利かせている方がいるので、注意する
必要がある。品川後見制度は安心できると思う。市民後見人制度に神戸市と横浜市が取り組んでおり、後見人を育成することが
はじまっている。この制度では、元気な内は老人の後見人として支えるが、自分が老いたら、自分が後見人を受けることが出来る
ことである。自分が制度を支えてきた経験があると、老後に制度を受け入れることがスムーズにいくと考えている。このまま高齢者
が増えていくと、後見人が足りなくなる場合が出てくる。
・老後破産というテーマを取り上げてきた。月の収入が13万円以下の人が対象で、300万人がいる。その内、財産を切り崩して生活
している人が非常に多い。その結果、老後破産に追い込まれるケースが増えている。老後破産の次のテーマとして“死にたい”と
いうことを問いたいという話が出てきた。自殺者の多い、秋田県に取材に行った。秋田県は農家が多いので、一人暮らしは少なく、
大きな家に非正規社員などをしていた若い人が転がり込んで、高齢者のすねをかじっていることが多く、困窮している実態があり、
次のテーマにした。若い人で就職が厳しかったのは、現在35歳くらいで、非正規社員になったのが50%以上だった。この年代の内
300万人が親のところに入らないと生活できなくなっている。親子共倒れという状況になっていることが分かった。ワーキングプアと
いうテーマを取り上げたが、非正規社員の40%くらいが厳しくなっており、何かあれば親のところに転がり込む必要が出る状態で
ある。団塊ジュニアで非正規で、自分の年金が少ない状況で、子どもが転がり込んでくると、親子共倒れということになってしまう。
・家族と同居することが前提の年金制度があり、作り変えるには非常に時間がかかる。このような状況では、何かあった時に伝え
られる縁を作っておくことが大事である。ひとり暮らしで月30万円以上の収入があっても認知症で行き詰った人がいる。縁を作る
方法として74歳の男性の例を説明する。男性は若い時は仕事人間だったが、退職する頃、奥さんが末期のすい臓がんで入院した。
奥さんから日々の生活を聞いて、ノート5冊にまとめたが、2ケ月後に奥さんが亡くなった。何もする気がなくなり、家でゴロゴロして
いた。人と話さなくなり、声が出なくなったことを自覚した。これではまずいと思い、歩いて20分くらいのところにある商店街に買い物
に行くことにした。そこで顔見知りが出来、話すようになった。救急車で運ばれた隣の夫人がお礼に来たとき、奥さまと大親友だった
ことが分かった。二人で相談して、お互いが顔を合わさないで、孤独死を避けるために、人形リレーをすることにした。女性は人形
リレーをするようになって積極性が出てきた。変わる切っ掛けとなったのは、人形に話すようになり、それが切っ掛けでエレベータで
奥さんから日々の生活を聞いて、ノート5冊にまとめたが、2ケ月後に奥さんが亡くなった。何もする気がなくなり、家でゴロゴロして
いた。人と話さなくなり、声が出なくなったことを自覚した。これではまずいと思い、歩いて20分くらいのところになる商店街に買い物
に行くことにした。そこで顔見知りが出来、話すようになった。救急車で運ばれた隣の夫人がお礼に来たとき、奥さまと大親友だった
ことが分かった。二人で相談して、お互いが顔を合わさないで、孤独死を避けるために、人形リレーをすることにした。女性は人形
リレーをするようになって積極性が出てきた。変わる切っ掛けとなったのは、人形に話すようになり、それが切っ掛けでエレベータで
一緒になる人に挨拶するようになり、近所の人と話すようになったとのことであった。男性は晩酌が美味しくなったとのことである。
男性は深酒をしての孤独死を心配して、お酒を少なめにしていたが、倒れても、隣の人が人形リレーで見つけてくれるという安心感で
ゆっくりお酒を飲むことが出来るようになったので、お酒が美味しくなったとのことだった。一人でも安心して暮らせることが分かった。
Q私がどのような末期が理想か聞いた答えとして、まだ理想という末期は分からないとのことであったが、大阪のお節介なおばさんの
話をしてくれた。大阪のおばさんは新聞配達や宅配の人に一人暮らしの人の様子を聞いていた。更に、骨董屋の人からも聞いて
いて、急に色々なものを売っている人がいると聞いて訪ねると、病気で急にお金に困っている人がいて支援している。また、日本の
役所は色々なサービスが申請主義なので、困っている人には代筆している。区役所では自筆が原則と困っているが、人権を守る
憲法が法律より優先すると言って、代筆を続けている。このように、色々なところでお節介をやくことで町を明るくし、人のために
役立つ活動をすることが大事だと説明された。
「感想」講師の話は聞けば聞くほど暗くなる感じだったので、もっと前向きな生き方をすることにより、明るく幸せな生活を
すると共に、社会を明るくする方法を調べて放送して欲しいとお願いした。