うつ病について 心理学部 岡田先生
1.うつ病とは
・臨床心理的には電話相談をしている。うつ病の相談が多い。2013年に高嶋忠夫さんの話が放映された。岡村隆史さん、丸岡いずみさん、
ユースケ、武田鉄矢さんなど芸能人にもうつ病の人が多い。
・うつ病とするには、診断マニュアルがある。非常に分厚いマニュアルで19年ぶりに改訂された。もう一つ、世界保健機関WHOが分析する
マニュアルがある。9つの項目の中の5つの症状が同じ2週間以上続いているかどうかで判断する。日常のうつ気分とどう違うかというと、
うつ病の場合は大きく落ち込むとか、日常生活が大きく阻害される症状が2週間以上続くことが特徴である。抗うつ薬はうつ病には効くが
うつ気分には効かない。うつ病は精神症状だけでなく、身体症状も出てくる。
・うつ病の誘因は近親者や友人との死別や病気だけでなく、喜ばしい筈の結婚や妊娠でも出てくる。どんなことでもうつ病のきっかけになる
危険性はある。仕事熱心で、真面目にしていて、几帳面な人はかなりかかり易い。うつ病に関連する他の疾患として、双極性障害がある。
双極性障害は日々の中に気分が大きく変わる。
2.世界におけるうつ病
・OECDは世界の勤労者の5%が重度の精神疾患になっており、15%が中度の精神疾患になっていると発表している。勤労者の20%は何らか
の精神疾患に罹患している。Yahooで調べると、世界の5%の3億5000万人がうつ病に罹患していると発表している。昔は感染性の疾患で
命を落とすことが多かったが、環境の改善により減ってきたため、慢性疾患の患者が増えてきた。このため、病気を抱えながら長生き
する時代になってきた。
・マレーやロペツェは疾病により失われた生命や生活の質の総合計を疾病負担と言いって、疾病負担と言って、数値化してDALYといい」
、独自の健康指標を提唱した。生存年数を障害調整生存年数(DALY)は、障害の程度や障害を有する期間を加味して調整した生存年数
で、次の通リに表される。 DALY(障害調整生存年数:健康な1年間の損失分)=YLD(障害共存年数)+YLL(早死損失年数)
DALYで世界の評価結果では1番は下気道感染である。2番は虚血症心疾患で、3番は脳卒中であり、単一性うつ病性障害は10番である。
先進国でのDALYでは、単一性うつ病性障害は3位と大幅に高くなっている。
3.日本におけるうつ病
・川上先生が心の健康についての疫学調査では、生涯有病率は6.2%で、16人に1人がかかっており、特別な病気ではなくなっている。日本
の気分障害患者数は年々増加しており、うつ病の割合が高い。男性より女性の方がうつ病になる場合が多く、男女の比率は1:2である。
仕事をしている男性は、昇進うつ病、定年うつ病、引っ越しうつ病が多い。女性の場合は、産褥期うつ病、閉経期うつ病が多い。
4.精神医学から考えるうつ病の原因と治療
・精神医学が考えるうつ病の原因は脳内神経伝達物質の異常であると考えられている。神経伝達のシナプスで信号を伝える物質が減って
いるためであると言われており、加齢による生物学的な宿命である。うつ病の薬物治療はシナプスの中のセロトニンの濃度を高めることで
バランスを取り戻す薬である。薬は1週間から2週間飲んで、効果が出るようになっている。即効性はない。抗うつ薬は2〜3週間飲んで
様子を見る方法を取っており、良く効く薬を探しているのである。薬を飲んで良くなっても、なかなか止めないのは、再発するのが怖く、一度
飲むのをやめると薬が効かなくなる場合が多い。薬物治療が駄目な場合は 電気けいれん療法、高照度光照射療法、経頭蓋磁気刺激法
などがある。
5.うつ病の治療
・アーベン・ロックはうつ病の認知療法を開発した。最近では、認知行動療法(CBT)と言われることが多い。認知療法は、ものの考え方や
受け取り方が悲観的、否定的になっているのを思考パターンを修正する治療法である。うつ病の人は自動的にものごとを悪く考えてしまう。
これを自動思考というが、自分の意思に関係なく、意識に浮かんでくるネガティブな思考で、これが抑うつ気分をもたらすと考えられている。
自己に自信が持てないとか、未来を悲観的に考える、周りとの関係を否定的に考えるためである、自動思考を数値化し、認知再構成する
方法がある。カウンセラーが出来事に対する考え方を変え、これらの考え方を変えると数値がどれだけ変えられるかを説明して、認識を
変える方法である。認知が変われば、何でもできると思うようになる。
・うつ病に間違われ易い病気にせん妄がある。病院に入院した時に起きる症状で、睡眠サイクルを正しく回すようにすると治る。
「感想」うつ的な気分は毎日くらい経験しているが、生活が出来なくなるほどのうつ病については今一つ良く分からなかった。仏教などでも
辛いことはこの世の中には一杯あるので、悟りを開いて、苦しみに耐えたり、人生に生き甲斐を持つように説いているのが、うつ病に
対応して、前向きに生きるためではないかと感じた。