終活から花活へ 明治学院大学 井上前副学長
1.講師の経歴等
・九州大学の文学部で心理学を勉強してきた。色々と仕事をしてきて、明治学院大学で心理学を教えてきて、2年前に副学長を退任した。
今は、生活をする上でハンディキャップを持つ人を支援してきた。今はマイクロ支援を考えている。又、トランセット法、ポジティブ心理学、
ライフストリーの研究に取り組んでいる。今日は、以前終活について話すことになり、その時まとめたことを話す。講師は8月14日生まれ
なので、毎年、誕生日にはお坊さんがお盆のお参りに来るので、誕生祝をして貰ったことはない。その後、弟や祖母が、その次の年は
母親が急死し、毎年悲しいことが起こったので、お盆の時は、その人たちの供養のため、自分の誕生祝いどころではなかったのである。
2.加齢への不安
・心理学を勉強していると暗くなる。子どもの成長ではエリク・H・エリクソン定昇の発達課題がある、年齢と共に、ライフタスクがあると思う
と不安になった。年をとるのが、不安だと思った。ライフヒストリーの研究をしていて更に、暗くなった。臨床心理学に行くと、悩みばかりで
聞かされるので、また暗くなった。心理学は問題ばかりを取り上げるので暗くなる。これでは駄目だと思っていた。
・愛犬ジョイが年をとって、2010年に16才で亡くなった。周りの人はみんな急死したので、ジョイが年をとって亡くなった時に感じたことがある。
その頃、ポジティブ心理学を学んだ。今までの心理学は足りないものを考える学問だったが、ポジティブ心理学は、より良い生き方、楽しい
生き方を研究するので興味を持った。人の持っている強みを生かせるようにした方が良いと考え方が変わった。
3.ポジティブ心理学
・ポジティブ心理学の世界的潮流として、幸福感の3つのタイプが出てきた。発想の転換である。自分の考え方を切り換えることで生き方が
変わるということである。3つのタイプとは、@愉快な人生:楽しむものを持っている。A積極的に関わりのある人生:人に関わりを積極的
に持っていける人である、B意味ある人生:自分だけでなく、他人のためになれる、ということである。
・ホ・オポノポノの教えは、人は昔の悲しいことに拘りを持っているので、これに脱却すると幸せになれるということである。そのため、4つの
言葉、@ごめんなさい、A許して下さい、Bありがとう、C愛しています、を言い続けることで、潜在意識の悩みの基になる記憶を消して、
健全な心を生み、幸せになれると説いている。マザーテレサの言葉に、思考に気をつけなさいそれはいつか言葉になるから、言葉に気を
つけなさいそれはいつか行動になるから、行動に気をつけなさいそれはいつか習慣になるから、習慣に気をつけなさいそれはいつか性格
になるから、性格に気をつけなさいそれはいつか運命になるから 、というのがあるように、私はポジティブに考えて生きたいと思っている。
4.終活から花活へ
・曖昧な喪失は、ポーリンボスが提唱したもので、はっきりしないまま残り、解決することも、決着を見ることも不可能な喪失体験であると定義
しました。明確な喪失に対比されることばで、明確な喪失は、多くの場合、その直後は悲嘆反応という悲しみの反応が出現しますが、時間の
経過とともに少しずつその悲しみから回復していく。しかし、あいまいな喪失の中にある人は、その悲しみのために、前に進むことができなく
なってしまうと述べている。
・曖昧な喪失は死だけでなく、加齢や老化などがあり、自分のアイデンティティや役割が脅かされ、自分の人生のコントロール感が失われたり、
将来への希望や夢が失われると言われている。そのため、どう立ち向かうか、ということであるが、行為すること、価値にふれること、価値を
認めることが大切である。
・仏教では自利他利という考えがあり、自らの修行により得た功徳を自分が受け取ると共に,他のための仏法の利益をはかることである。
花も自分が愉しく咲く(自利)と、他人の愉しくさせるために咲く(他利)を持っているので、人生の老後も、終活ではなく花活ということを提唱
したいと考えている。
・自分の人生をどういう道筋を作っていくのかということが重要だと考えている。
「感想」今日のお話は大変面白かった。これまでは弱者の支援というテーマが多く、何となく暗くなったが、ポジティブ心理学のように
前向きで、楽しく生きるということが大事だと思っている。港区も弱者保護も大事だが、世界の最先端を行く都市としての可能性
を、高齢者が増えている区民全員が取り組んでいくことも非常に大事ではないかと考えている。私の生き方も是非参考にしたいと思う。