共生社会での協働するとは 中野先生
1.社会福祉が捉える障害とは何か!
・障害は色々な面から見ると変わってくるので、あなたの理解する障害、社会福祉学が捉える障害、共生社会での障害について
考えてみる。車いすは常に使うとは限らないので、港区には、車いすステーションがあり、必要な時に車いすを借りられるように
している。車いすは制度に基づく補装具として扱われている。制度で決めている補装具は3つの条件を満足する必要がある。
@、身体の欠損、又は、損なわれた身体機能を補完、代替するもので、障害個別に設計・加工されたもので、A、身体に装着
して日常生活又は就労・就学に用いるもので、継続して使用するものである。B、給付では医師の判定書が必要である。
・車いすを使っている人はどんな人か考えると、歩けない人で、車いすの役割は移動できるようになることである。しかし、車いす
で競技をしている人では自分の足ではスポーツが出来ない人であり、車いすの役割はスポーツが出来るようになることである。
足以外は健康な人がいる。このように車いすを使ってスポーツをする人は、体力があり、スポーツが出来る人であり、車いすは
身体の一部である。障害者の中にも選ばれた人がいる。パラピンピックに出られる人はほんの一部であり、選ばれた人である。
・大学の授業で説明すると、学生は介護目線で見るが、高齢者のように自分のことと思ってみると大きく違ってくる。イメージを作って
いるのは何かというと、体験や学習から得た知識、情報、自分の価値観の平均値が社会通念として世の中の評価を作っている。
市民一人一人の理解が障害のイメージを作っていく。障害へ社会的介入が必要と考えると、どう認識するかで介入方法は異なる。
・障害福祉計画を港区で作っている。高齢者は障害だらけになっていく。高齢になって出掛けられなくなる。しかし、障害者は若い
時から障害になっているところが大きく違う。障害へ社会的介入が必要になり、社会的法制度がつくられた。社会的通念がカギ
を握っている。認識により介入方法が違ってくる。障害者に対して隔離や排除を越えて共生していくことになる。
・大正7年に精神病者の私宅監置状況と統計的観察が報告された。隔離、排除すると見えないので、調査し改善することになった。
1950年代にデンマークで知的障害者収容施設で多くの人権侵害が行われたことに対し、ニルス・エリクさんが、他の市民を支えて
いるノーマルな生活条件を障害者にも提供するノーマライゼーションを提唱して、1959年にデンマークで法律を制定した。
・ICFでは国際生活機能分類をWHOが作成した。障害は色々な局面を持っているので、国際生活機能分類モデルを考えた。モデル
では健康状況と生活機能、環境因子、個人因子に分類して整理する。生活機能は心身機能、身体構造、活動、社会参加に分類
して、プラス部分とマイナス部分を明確にして、必要な支援を行うことにより、その人の人生が広がるようにする。
2.さまざまな人権の確認の歩み
・国際的な障害者への取り組みとしては、国連が決めた1981年の国際障害者年で世界的に取り組んだことが始まりである。
1990年にアメリカで障害のあるアメリカ人法を法文化した。1993年には障害者の機会均等化に関する基準規則が制定された。
・障害者権利条約が国連で2006年に採択されたが、日本では、国内法を是正するために時間がかかり、2007年に批准した。
2005年には障害者自立支援法は、若い人にも適用するため、介護法と別に制定した。学校教育では特別支援教育と改称した。
2011年には虐待防止法が出来、2013年には差別解消法が制定されて、障害者の権利支援の目的を明確にしたが、実態的
には、なかなか改善されなかった。
・2013年に障害者基本法が改正された。障害者に発達障害も含まれた。社会的障壁として、障害がある者にとって日常生活、
又は、社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいうと決められた。
すべての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること並びに障害者
の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とした。
社会共生として、意思疎通のための手段を提供することになり、手話が活用されるようになった。また、障害者が福祉サービスを
受けることが出来るようになった。障害者福祉を支える法律としては、障害者基本法があり、その下に障害者総合支援法がある。
更に、個別の障害者に対する法律があり、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者に関する法律、
児童福祉法、発達障害者支援法などがある。
3.社会福祉学が捉える障害
・社会福祉は、その人の暮らしをとらえて、支援が必要なら社会的支援を生み出す。暮らしの中の障害をとらえていくので、社会
福祉はその人の暮らし方を変えていく。社会がどのように理解するか変わってくるので、支援はその人の生き方を変える手伝い
である。言えない、見えない、気づかないとか、限られた人や限られた場所で暮らすことが虐待や差別が起きる背景であるので、
無関心が一番の障害である。
・共生は同化ではなく、異化として存在することであり、異なる生物が同じ場所で相互に作用しながら暮らすことである。
「感想」お話としては、何となく分かった感じがするが、障害者にも色々な状況があり、高齢者の状況も良く似た感じがあるので、
具体的に何を考えると良いのかは分からなかった。特に、競争が激しくなる今日の事業所では生産性を求められるため、
精神的に行き詰る社員も増えているので、その人たちが障害者とならないようにするには、何をすれば良いか知りたかった。