今日の貧困と生活保護              新保先生

   ・今日は6人に1人が貧困状態であり、景気は改善されているというけれども、生活保護の受給者は減らない状況である。

    生活保護の受給者は高齢者なので、経済が良くなっても、生活保護の受給者は減らないのである。保険料が増えている。

    40歳になるとみんな介護保険を支払うことになっており、保険料も年々増えている。このような状況の中で貧困について、

    一番大切なのは現実を理解することである。

   ・生活保護制度では、国が決めた基準になる金額より収入が多いか、少ないかで、生活保護を行うかどうかが決まる。

    今の生活保護法では、無差別に平等に収入で判断することになっている。昭和21年に制定されていた旧生活保護法では、

    欠格事項があり、働けるのに働かない人や素行不良の人は対象としないことになっていた。今の多くの人は旧生活保護法

    の考え方が染みついている。この感覚があることは大切にしたいと考えている。

   ・生活保護における自立支援については3つの自立の考えがある。経済的自立と日常生活の自立、社会生活の自立である。

    日常生活の自立とは、身体や精神の健康を回復・維持し、自分で健康・生活管理を行うことが出来ることであり、社会生活

    の自立とは、社会的なつながりを回復・維持して、社会生活が出来ることである。経済的な自立は就労による自立である。

    生活保護受給者が増えてきたので、平成17年より、自立支援プログラムを導入した。多くの自治体では一般公務員が生活

    保護の仕事をしている。しかし、生活保護の仕事には専門的知識が要求されるので、誰でも対応できるように、今までやって

    いた支援を見える化をした。私は就労支援の仕事は辛く、嫌いだった。しかし、隣りの職員は就労支援の仕事が得意だった。

    就労支援の得意な人は就労が出来ない理由を聞き出して、履歴書が書けない人には履歴書を書くのを支援したり、面接に

    着ていく服がない人には服の準備を手伝ったり、面接の訓練などをしていた。このようなことをプログラムにして、見える化を

    したことにより、誰でもが対応できるようにした。今、生活保護を受けている人の数は50人に1人である。まだまだ、貧困者で

    生活保護を受けていない人が多い。生活保護を受けていることの罪悪感がある。色々とやった末に相談に来た人がほとんど

    である。働くことの意味は経済的な自立だけでなく、日常生活の自立、社会生活の自立の3つの自立である。自立にはお金に

    かえられないものがある。この3つの自立はバラバラでなく繋がっている。経済的な自立をし、日常的な自立をして、社会生活

    の自立をすると、経済的な自立が進み、日常的自立が進むというように循環して良くなっていく。就労も自立の双方が大事だ。

   ・私たちに何が出来るかを考える。

    生活が乱れて、酒に溺れたり、パチンコにのめり込んでいる人でも、いいとこ探しをする。ストレングス視点で見ることである。

    一人一人の持つ可能性・力を信頼して、それを活かして支援をしていくことが必要とされている。昔は生活が乱れている人

    働けるのに働かない人が相談にきても追い返していた。そうすると、お金がなくなり、家を売ることになり、借家に住むとお金

    がなくなり、住むところがなくなり、路上生活になる。そうなると短期間で病気になり、どうにもならなって相談に来ることになる。

    その段階になると、治療費にお金がかかり、自立するのが困難になって、老後まで保護することが必要になり、生活保護する

    のに、非常に大きな費用がかかる。早い段階で就労支援をすると短期間で就労できるようになる。トータルコストを考えると、

    早い段階で支援する方が良いと考えた。貧困な状況になる経過は外からでは分からない、様々な理由がある。その背景に

    あるものを理解して、支援を必要としている人に対して、今、何ができるかを考えることが大切である。

   ・叩いて潰すのは簡単だが、立ち直るためには時間もお金もかかる。みんなが出来るのは励ますことである。

   「感想」今日の貧困と生活保護について、お話を聞いた。最近の考えは感覚的には納得いかない気もするが、
    
        健全な社会を作るということから考えるともっともな取り組みだと思った。しかし、この取り組みは性善説

        に基づく考えのため、怠け者や性悪な人を対象にすると、支援する人が疲弊する感じが強いと思った。