施設見学 (横浜寿地区)             清水先生


1.民生委員佐藤真理子さんの説明     

   ・横浜の関内駅近くにある寿福祉プラザや地域の設備を見学して、寿地域の成り立ちや福祉事業の説明を受けた。

   ・寿福祉プラザがある場所は米軍が接収してテントを立てていた場所である。戦後、横浜には米軍の物資を陸揚げするための

    仕事はあったため、人が集まってきた。桜木町に仕事が多く、ほとんどが日雇い労働であった。そのため、京急のガード下で

    寝泊りする人が増えてきた。寿地区が米軍から返還された時に、横浜市は、これらの日雇い労働者に対して、仕事も、食べる

    ことも、住むところも、風呂に入るのも寿地区に集めた。そのため、簡易宿泊所がたくさん出来た。今の寿地区の簡易宿泊所

    はほとんどが鉄筋の
コンクリート構造の個室で、テレビや冷蔵庫、風呂がついている。当初の簡易宿泊所は、鍵のかかる場所

    がなく、お金をしまう
場所がないため、毎日お金を使い果たしていたので、夜間金庫を作った。大岡川沿いにたくさんの屋台が

    あったが、川に
蓋をして集めた。これが寿地区の始まりである。

   ・生活自立支援設備“はまかぜ”を建設した。3階建てのコンクリート構造で、1億円建設にかかった。半分は補助金を出して貰い、

    残りは寄付でまかなった。“はまかぜ”では、4人部屋で、2食が提供されるので、お金を貯めて、民間のアパートを借りて出て

    行った人もたくさんいる。寿福祉プラザが完成して、横浜市の福祉課も入居して相談業務を行っている。入居者の健康診断も

    行っている。職業安定所や労働出張所も集まり、地域の福祉の拠点となっている。今は福祉ニーズの高い町と言われている。

   ・昔の人は日雇いで身体を酷使していたためか平均年齢は短く、60歳までに亡くなっていた。今は60歳以上の人が増え、51

    になっている。毎年300人くらいが亡くなっているが、人口わっていない。新しい人が入ってきている。今、寿地区に来る人

    は炊き出しに行ったことのない人が増えている。ネットカフェで暮らしていて、行政の福祉の人に連れられてこられた人もいる。

    今では19歳の人も来ている。派遣切りで“はまかぜ”に入る人も多い。“はまかぜ”に入って分かったことは障害のある人が多い

    ことである。18歳以上になると精神障害と言われているが、早期に発見すると“はまかぜ”に来ないで済んだかもしれないと思う。

    寿地区に来る人はほとんどが家族と離れていて、一人の人である。行政ではすべて寿に持ってくる。選択することが出来ない。

    最近では静岡の行政の人が片道切符を持たせて、寿地区に送ってくることがある。地域では対応できないと言うことだと思う。

   ・昔は子供が多く、幼稚園が2つもある。今では子供は減っていて10名弱である。学童保育では“はまかぜ”以外の子どもが多い。

    一人親だったり、親が外国人だったりして、家庭に課題のある学童が来ている。地域に何かがあれば、このような施設がなくて

    も
良いか考えて欲しいと言っている。

   ・横浜市は福祉関係のことで強制執行をしたことは一件もない。対応には丁寧に行う必要があるため、時間がかかる。行政では

    認めることが出来ないことは地域に任すことが多い。平成元年に簡易宿泊所が火事で年末に住むところが不足した時、市は

    プレハブを作って対応した。その時のプレハブの運営を企業や法人ではなく、地域に任せた。市と地域のパイプは必要である。

    “はまかぜ”は4人部屋なので、共同生活が無理な場合はシェルターと言って、簡易宿泊所で対応するようにしている例もある。

   ・寿地区で大事なことは距離感である。朝から大きな声を出す人もいる。ブツブツ言って歩いている人もいる。このような時には

    関わらないことように、距離を置いておくことである。みんな苦労してきているので、トラブルを起こすことは少ない。この距離感

    が
崩れるのは、アルコールが入ったり、薬物を使って、ハイになった時である。

   ・寿地域の住民は男性が90%で、女性は少ない。男性と女性が一緒になるとトラブルが起こることが多くなる。そのため、寿福祉

    プラザでは男性と女性でフロアを分けている。女性が少ないのは、女性の方が男性より生活的には強いと言う感じがする。


2.由良さんの説明

   ・毎週金曜日に炊き出しを行っている。炊き出しは雨であろうと休まずに行っており、昨日の雨の中でもテントを張り、1,500食を

    提供した。炊き出しの目的は、情報交換が出来ることである。また、日雇いで働いている人は野菜を摂ることが足りないので、

    雑炊にして提供いる。飽きるといけないので、味をその都度変えている。安否確認も出来る。健康相談や生活相談、法律相談も

    専門家が来て対応している。求人募集に、住所を寿と書くだけで、仕事を断られることがある。炊き出しに来る人には何らかの

     形で精神疾患を患っている人が多い。健康相談や生活相談が大事である。路上生活では地域によって生活形態が異なっている。

   ・炊き出しも大変であり、学生やボランテアの人がたくさん支援してくれているが、かなりしんどくなっている。

 「一言」NTTソフトウェアに勤務している時に、関内には毎日通っていたが、関内駅近くの寿町は知らなかった。

      佐藤さん達が地域をまとめて、コミュニティを作っているのは、頑張っていると思った。行政は出来ないことが

      多く、コミュニティがしっかりとして、行政と連携することが重要だと感じた。戦後、大家族や地域のコミュニテイ

      は崩壊したことから、最近色々と課題が出てきている感じがする。