精神障害と社会福祉 〜うつ病を中心に〜 明治学院大学 村上教授
・うつ病は絶対に良くなるということを理解して欲しい。医学は実学なので知っていると知らないとでは大きく違う。躁状態はうつ状態の逆になる。
うつという状態は木が生い茂って動きが取れない塞がれた状態である。うつ病とは気分が落ち込み、何もする気になれなくなり、疲れやすい。
そのため、日々の生活に支障が出るようになる。アロスタティクの概念は新しいストレスの概念である。人間が社会生活すると、ストレスがある。
そのストレスが認識されて、適応反応をする。適応としては、逃げるとか立ち向かうことが考えられる。ストレスに対して、ステロイドホルモンが
出てくる。ストレスが長期的に続くと身体に不都合なことが出てくる。
・うつ症状は、感情は憂鬱で、悲哀、不安、焦燥感がある。意欲は低下し、思考が停止する。そのため、自殺につながることがある。うつ病でも妄想
が起きる。貧困妄想や罪業妄想が出てくることがある。うつ病は絶対治るので、自殺だけは防ぐ必要がある。自殺指向の人には電気ショック療法
が効果が大きい。うつ病は本人が大変だが、躁状態は周りの人に迷惑をかける場合が多い。身体的には、不調、不眠、食欲不振になる。その
ため、うつ病の初期には内科に行って診て貰う人が多いが、何もないと診断されることが多い。気分障害の患者は女性が多い。
・日本は、バブルが崩壊した1998年から2011年まで自殺者が年間3万人を超えた。2011年から減少しており、2014年には25300人になった。交通
事故が年間で4100人になったので、非常に多い。自殺の原因は健康問題が最も多いと言われているが、経済的影響も大きい。世界ではバルト
3国やハンガリーが高いが、韓国もプロテスタントが多い割には多い。
・うつ病増加の原因は、@ストレスが溢れている、A現代人はストレスに弱くなった、Bマスコミの影響で受診するようになった、C精神科に対する
偏見が少なくなった ことがある。ストレスは人によって違う。年寄ったら好きなことや身体に良いことをやった方が良い。製薬会社がテレビで
放送するドラマからうつ病が一般的に知られるようになってきた。このように、@うつ病の啓発→Aうつ病の治療が必要→B受診率の向上→C
患者の増加→D薬の売上が増える という循環で増えており、薬の売上は1千億円を超えている。うつ病は経済損失が大きく、重要な病気である。
・うつ病の進行は、前駆病状、初期・中期、極期となるが、自殺念慮が一番困る。初期症状の本人への配慮は心理的休息をとるようにして抗うつ薬
の服用が必要である。普通の状態ではないことを本人に理解させて、人生の決断は延期させるべきである。また、回復期には悪い体験をさせない
ように注意し、いい意味での手を抜くようにさせる。家族への配慮としては、愛情のある無関心が大事である。本人も一生懸命にやっているので、
負担にならないようにすることが大事である。他人の目を気にし過ぎないで、自分でやりたいことだけをやる方が良い。最初は、自分から進んで、
頭痛や肩こり、食欲不振を訴える。周りが気づくことは、うつつになるとか、涙もろくなる、表情がなくなる などである。
気分転換する気がなくなる前に手を打つ必要がある。朝早くから目を覚めるが、憂鬱な気分で食欲がないので、朝食を抜く。仕事は行きたくない。
会社に行っても仕事がはかどらないので、残業をする。友達に会いたくない。何もつまらないので、お酒が増えるというサイクルになる。
・人間にはキャパがあるので、超えると駄目になる。物理的刺激は調整できるが、心理的刺激は重なると危ない。日常の生活にストレスがあり、
それだけなら何とか凌げるが、就職や失業、近親者の死、結婚・離婚、転居・転校などが重なるとキャパを越えて危なくなる。プレッシャーが
なくなった後、うつになる人が多い。荷物を下ろす時が危険である。ストレスはすべて悪いかというと、ストレスも必要である。チャレンジなもの
をやる時のストレスは悪くない。ストレスをどう見ていくのかであるが、心の持ちようで、認知の方法が大事である。刺激に対して@自分で克服
すること、A回避すること、B協力して貰う方法がある。ストレスに対して身体的に反応が出てきたら、ストレッチなど、何かする。やられっ放し
は良くない。正しい知識を選択することが大事である。感情的、気分的なストレスが出ると薬を飲むべきである。利用できるのに利用しないの
は良くない。主体的に利用するよう考えるようにする。社会的支援としては、職場でも、友達でも、気晴らしすることがあることが大事である。
・心理的アプローチは認知であると言える。過度の締め付けは止める。精神分析は時間がかかるし、ほとんど役に立たないと思われている。
ポイントは本人の認知である。人間は事実では悩まない。その人がどう捉えるかで変わってくる。
・ストレスと3つのRと言われている。Rest:休憩、Relaxation:くつろぎ、Recreation:気晴らし(再創造)
参考:仕事のオンとオフの区別をはっきりつけ、ゆったりとした時間を持ち、聴覚、聴覚、嗅覚、味覚など五感をフルに使うことが良い。
・心の健康のための3つのCがある。 : Cognition:認知、Control:コントロール自覚、Communication:コミュニケーション
参考:ものの見方・考え方を柔軟にし、人付き合いや人間関係を大事にし、自分らしく行動しているという感覚が持てるようにする。
「感想」うつ病は職場にも何人かいたので、気になる疾患であり、興味深く聞くことが出来ました。
必ず治る病気ということを聞いて、きちんと対応することを理解しておくことが大事だと思いました。