今日の貧困と生活保護             明治学院大学 新保教授

   ・自己紹介:社会福祉の勉強をしたいと思って、社会福祉学科があった明治学院大学で学んだ。当時、社会福祉学科があった学校は少なく、

    明治学院大学は数少ない学校だった。社会福祉事務所で高齢者の相談をした後、学校に戻ってきた。明治学院大学には福祉の本が沢山

    あり、調べるのに重宝している。現在は、生活保護や低所得者の制度や援助について担当している。

   ・現代の貧困をめぐる様々な状況を把握して、誰もが安心して生活できる社会にしていくために、私たちに出来ることは何か一緒に考えたい

    と思う。貧困とは何か。資料の友子さんは貧困か考えた時に、イギリスの社会学者ポール・スピッカーが書いた本「貧困の概念」のまえがきで、

    同様な話が出ている。4つに分類される。@友子さんは貧困ではない(⇒絶対的貧困)、A貧困である(⇒相対的貧困)、B情報が少ないので

    分からない、C友子さんをどうしてしたら良いかと考える人である。相対的貧困は、食べること、住むことは出来るが、お金がないために、出来

    ないという精神的なことを考えた貧困である。

   ・日本ではリーマンショック後に、日比谷に派遣村が年末に出来た。12日に厚生労働省は講堂を開けて、路頭に迷っている人を受け入れた。

    14日からは生活保護の申請をしていくように指導した。派遣村が出来る前までは生活保護くらいしかなかった。今では生活支援法が出来た。

    国会で貧困のテーマが盛んになり、厚生労働省などから色々な資料が出てきた。今、話題になっているのは、相対的貧困であり、子供の貧困

    が大きな課題になっている。今は食べられない子供がいる。服装などは外から見えるので買うが、外から見えない食事を抑えているため、食べ

    らなくなっているのである。仕事をしており、子どもの送り迎えのために自動車が必要になっているので、生活保護を受けていない人もいる。

    今は塾に行っていない子供はいない。学校の授業だけでは落ちこぼれになってしまう。

   ・日本の貧困率は16.1%である。厚生労働省が実施する国民生活基礎調査で、2013年の貧困線は122万円で、貧困線に満たない人は16.1%で

    あり、一人親世帯の子どもに限ると54.6%である。こうした中で、20136月に子どもの貧困対策法が成立した。生活保護受給者は20153

    には217万人であり、国民の1.7%である。高齢者世帯が46%であり、母子世帯が7%、障害者世帯が29%である。相対貧困率は16%であるが、

    実際に、生活保護制度が支えているのは1割程度である。生活保護世帯の多くが高齢者であり、年金だけでは生計が維持できない世帯が多い

    ことが分かる。年金受給者の場合は、貧困線から年金部を減じた額が生活保護で負担するため、生活保護費全額を支給する訳ではない。

    就労意欲があるが仕事ない世帯などのその他世帯は18%であり、単身世帯では、10代と20代は3%、30代が7%であり、最近話題になって

    いる若者の数は相対的に少ない状況である。

   ・生活保護受給世帯の子どもの高校進学率は88%であり、一般世帯98%より低い。生活保護受給世帯の子どもには学習支援の取り組みが

    拡がっている。しかし、高校進学率は上がっているが、普通科ではなく、定時制や通信教育が多く、これらは勉強意欲が要求されるため、入学

    は出来るが、なかなか卒業できない状況である。進学しない子の多くが、小学4年くらいの知識で止まっていると言われている。

   ・全国の自殺者は10万人に対して24.9人であるが、保護を受けている人の率は55.7人と高い状況である。これは精神疾患の人が多いのが原因

    ではないかと言われいる。

   ・生活保護制度は、憲法25条で規定される生存権を具現化する制度で、生活保護法に基づき国民に無差別平等に健康で文化的な最低限の

    生活を保障する制度であり、保障する金額は毎年、世帯の人数や地域によって、国が基準を決めている。合わせて自立の助長をケースワー

    カーが行うことになっている。収入があっても、基準に足りない人は不足分を支給されている。生き方やそれまでの生活については一切問

    ない。更に、扶養義務者の扶養は民法の考えにより、保護に優先して行われるとされている。

   ・具体的には、資産は使えるものは使うという考えなので、家を持っている場合は売って、アパートに入って家賃を払った方が良いのか、家を持ち

    続ける方が良いのか見ながら決めている。派遣村が出来る前は、福祉事務所が、若い人は仕事を見つけないと生活保護を受けつけなかった

    が、今では、そのように制約している事務所はない。そのようなことをしていると国からの指導を受ける。自動車で仕事をしている人は再就職が

    出来るように自動車を持つことを認めている。また、生活上、車が不可欠な人や過疎地で自動車がないと生活が出来ない場合もあり、今では

    1年間は所有を認めている。住民票がなくても、生活を守るために、住んでいる役所で受け付けている。夫の暴力から逃げているとか、色々な

    事情で、住民票のない人は結構いる。しかし、介護保険等では住民票があるところが重要になる。社会的に弱っている人は役所の敷居が高い

    と感じているので、社会福祉事務所は一緒に考えるようにしている。大学進学はまだ駄目だが、高校までは認めている。

   ・先日、有名な漫才師の母親が不正受給をしていたと問題になっていたが、問題はなかった。母親は子供から仕送りを正確に報告しており、不足

    分を受給していたことが分かった。しかし、この問題が出てから扶養義務を厳しくするようになっている。これまで、夫などからの暴力から逃げる

    ために、貧困と扶養義務は分ける方向だったのに残念な感じである。

  「感想」 貧困の考え方や生活保護の扱い方が少し分かった感じがする。憲法で保障している最低限の保障がどのように
 
        取り組んでいるか分かって、国も頑張っている感じがした。