子どもの虐待に関する状況と地域の役割        明治学院大学  松原教授

1.虐待の件数が増加

    ・虐待の件数が増加しており、2013年の全国の児童虐待相談件数は72802件となっている。この件数は気がついた件数であり、実態はもっと

     多い。
73千件の支援する子供が見えてきたということである。厚木で子供が餓死したことがあるが、10年間見つからなかった。このことから

     オレンジ
リボン運動が起こった。同居していた子供に虐待を繰り返して殺してしまったことも出てきた。学校も校長が出てきて対応していたが、

     校長と父親
の話し合いで、今後、虐待しないということで、児童相談所に上げられて報告ということで重要視されないで、事故が起こった。

    ・虐待に関する法律が何度も変わっており、心理的な虐待も含まれるようになった。この結果、身体的虐待より、心理的虐待が多くなってきた。

     正座を長時間させるのも心身的虐待である。親が子供に自分の子供ではないということを繰り返していうことも心理的虐待とされるようになった。

    ・同じ服を何日きていると虐待と考えるのかということであるが、今回の聴講生の意見では34日で虐待という意見が多かった。しかし、子ども

     が好きな
キャラクターの服で着続けたいと言った時は、3日続けて着ることはあると思う。1つの現象を見てもなかなか判断しづらいということに

     なる。
まだ、虐待の把握は出来ていないものがある。児童相談所が把握している件数は1万人以上多い。専門家は分からないという状況に

     なっている。


2.虐待発生のメカニズム

    ・今日のように天気が良いと洗濯をするが、外出する必要があると取り込んで貰うように頼むことになる。しかし、取り込むのを忘れてしまうことが

     ある。
洗濯するという処理と取り込むのを忘れるというストレスの解消や緩和を忘れるという阻害することから、ストレスが増大していき、その

     ため、生活
単位で最弱者である子どもや高齢者に対し虐待が出てくる。子どもや高齢者がいない一人身の人は自分自身に虐待することがある。

    ・虐待を受けた人が構えて相談するには勇気がいる。相談したいと思う人の「あのー」は大切にして欲しい。子供の虐待が分かると介入と支援で

     ある
が、親子の分離は難しく、8割以上が、親子が同居する中での対応となる。虐待を防ぐには教育が大事である。命の教育、母子保健、子育て

     支援に
つながっていく。日常の養育支援の基本は助言や援助でなく、手を携える、一緒に考えることが大切である。

    ・民生委員、児童委員の活動事例では、土曜日も働いている母親もいるので、土曜日の対策も重要となっている。子どもは傷ついてもなかなか

     話そう
としない。親と一緒に暮らせなくなるのではないかとか、自分が悪いのではないかと考えているので、話をすることが出来ないのである。

     虐待して
いない時の母親は大好きなのである。だから、母親と離れるのが怖いし、不安が強いのである。

    ・今は愚痴を聞いてくれる人が少ない。知り合いが少ないので、ちょっとした手助けが大切である。家族からの相談が16%なので、まわりの発見

     が大切
である。児童虐待を受けたと思われる児童を発見した人は通報する義務がある。罰則規定はないが、法律で決まっている。


3.虐待への介入

    ・虐待に対しての介入は児童相談所が行うことになっている。無断で家庭に入ると家宅侵入罪になるので、なかなか家の中に入れない。その

     ため、
出頭要求が出来るようになった。何度も出頭要求を出しても応じない場合は裁判所が臨検することを認める法律が出来た。しかし、年

     に数件である。
親権者の同意がなくても、裁判所の承認が得られれば、一時保護や2年間親子分離し施設で保護できるようにもなった。更に、

     親権の喪失や一時
停止も行うことが出来る。

    ・外国籍の母親の場合は言葉の問題で孤立することが多い。そのため、同国籍の女性のグループを作って、定期的に集まることで、当該の母親

     も
母国語を楽しみ、子どもへの不適切な対応も解消させた民生委員がいる。更に、当該グループと地域の有志で民族舞踏サークルを作って、

     地域住民との交流を進めている。

    ・これまでは出頭要請には個人の名前が必要であったが、大阪のマンションで2人の子供が遺体で発見されたことがあり、住所に住んでいる人と

     いう
ことで出頭要請が出来るようになった。子どものSOSを受け付けることは大切である。

    ・支援は地域で行うものである。虐待している保護者の排除は孤立をもたらし、虐待がもっとひどくなるので、虐待を認めないことは保護者を排除

     する
ことではない。子育ては「こうするもの」、子ども・親は「こうあるべき」感は払拭するべきである。これまでの検証でも社会的孤立は共通要因

     となる。
虐待の対応は予防が大事であり、発生したら早期発見が重要である。対応にはネットワークが必要であり、地域住民の適切な支援が

     重要となる。


4.質疑

    Q虐待としつけの差は?

    A子どものためを考えて行うのがしつけであり、感情にまかせて行動し、子どもの心に傷が残るものが虐待である。

    Q子どもの頃、虐待を受けたきくなると虐待するようなるとうが?

    A.子どもの頃、虐待された人が大きくなると虐待するということとは関係ない。統計的なデータもない。

「感想」子どもや高齢者への虐待は被害者、加害者共に不幸なことである。加害者は相談する人がいないので、孤立して虐待することになるが、

     子育てや高齢者の世話には世話する人が精神的に参ってしまい、虐待につながることもあると思うと、やりきれない感じがする。