子ども、子育て支援の現状と地域の役割          明治学院大学   松原教授

1.子どもの“いま” : 少子社会

   ・1970年前後は第二次ベビーブームだった。これは第1次ベビーブーム世代の出産期に当たる。しかし、2000年前後には第三次ベビーブーム

    起きなかった。1950年頃(1947年〜1949年)が第1次ベビーブームで1年に250万人くらいが生まれていた。1970年頃(1971年〜1974年)が第2次

    ベビーブームだったが、1年間に250万人は生まれなかった。2000年前後には第3次ベビーブームを想定出来たが、こなかった。現在は出生率は

    右肩下がりで、平成24年には年間の出生数は103万人になった。2018年問題が出ている。2018年には子供の数が大幅に減少する見込みである。

   ・15歳から49歳までの女性がその年に出産した子どもの数を女性の数で割った数値を合計特殊出生率というが、この数値が2.08ならば人口は増減

   しない。昭和40年代はほぼ2.1台で推移していた。しかし、昭和50年に2.00を下回って低下傾向になり、平成24年には1.41に減少している。


2.少子社会の要因

   ・少子社会の要因は、ライフスタイルが変化してきたことであり第一子出生時の母親の平均年齢が上昇傾向であり、2829歳になっている。第2

    経済的負担感である。経済的な負担から子どもの数が3人までになっている。塾は月に2万円、ピアノが月に1万円弱なので、子ども2人なら5万円

    かかる。明治学院大学の受験料は35千円だから、4つ受けると14万円に、入学金が100万円なので、保険が必要になる。その後、4年間授業料

    を払うことを考えると経済的には大きな負担になる。第3は子どもの未来への不安感がある。被害者になる場合もあるが、加害者になることも心配

    である。第4は心理的負担感である。子どもの離乳食について、相談すると初日はスプーン1杯、2日目はスプーン2杯、・・・と言われて、実行する

    と4日目以降は子どもがベーをするようになる。母親は悩み出す。その人は相談センターに連絡がきたので一応治まった。しかし、相談する人が

    いない母親は一人で悩む。知識はあるが、知恵ではない。知識で戸惑っているお母さんも結構いる。

   ・経済的な負担感は社会保障費で対応すればいが、不安感はどのようにすれば良いのか。学校を出て、就職した後、結婚して子どもを産んだが、

    近所に知り合いがいないので、煮詰まる人が多い。心理的負担感のためには、近所に知り合いが出来ることで効果が出てくる。


.少子社会がもたらす状況

   ・人口減少ははじまっている。年少人口(14歳以下)は平成42年には10.3%であるが、平成60年には9.8%に、平成72年には9.1%になる見込みで

    ある。生産年齢人口(1564歳)は平成42年に58.1%、平成60年には51.8%、平成72年には50.9%となる見込みである。老年人口(65歳以上)は

    平成43年は31.6%、平成60年は38.4%、平成72年では39.9%になる。人口も平成72年には8674万人に減少する見込みである。

    日本の人口の偏在が大きく、東京、神奈川、埼玉、千葉の4県で3560万人が集まっており、日本の人口の1/3を超えるように集中している。

   ・子どもは想像する力があり、伸びやかな力を持っている。しかし、サンマ(仲間、時間、空間)が減少しており、消滅の恐れがある。更に、子どもが

    集う場所がなくなっている。子供が忙しく、地域社会が通過する場所になっている。また、近所の人や子供を知らなくなっている。

   ・子どもは生き辛くなっている。いじめは平成23年に7万人、不登校は11.7万人、児童虐待は6.7万人であるが、この数値は把握された件数であり、

    実際の数字はもっと多いと思う。アンジェラ・アキさんの歌に、負けそうで、泣きそうで、消え入りたいのに相談する人がいないので、将来の自分

    に手紙を書いているという歌詞があるが。これが今の子どもの状況である。また、いじめられていた子が数日でいじめになることもあり、人間関係

    が非常に難しくなっている。

   ・全国的にチャイルドライン支援センターがあるが、基本的には自主運営している。子どもにとってハードルが低いことがある。4つ約束があり、秘密

    は絶対に守る、名前は言わなくて良い、嫌になったら切っても良い。相談する内容はどんなことでも良いということである。悪戯で相談しても良いと

    のことである。相談の内容は、小学生は人間関係が一位で、次いで、雑談、いじめをなっている。中学生になると。女性は人間関係であるが、男性

    は性の問題が一番多い。中卒から18歳にかけては、一番が性の問題で、2位が人間関係、3位が雑談と変わっていく。思春期特有の身体的な

    悩みも多く、自分の身体はみんなと違うような気がするなどの相談がある。相談する相手がいないことが多く、子どもの居場所が大切だと思う。


4.子育て支援施策

   ・港区の施策について説明すると、目的は教育・保育の質量の確保と充実であり、認定子ども園を今年度ケ所を開設する。保育の種類も増えて

    おり、5種類になった。しかし、子どもを保育に長時間預けていて良いかという意見がある。色々な意見があっても良いと思う。個人の状況は様様な

    ので、色々なものあっても良いと思う。子ども子育て支援事業として、入学後の放課後の児童対策も必要であるということで、一時保育、病児・病後

    児保育、延長保育などがある。色々と施策を作っても、基本はワークバランスであると思う。


5家族・子どもを取り巻く環境

   ・無縁社会は無援社会であるということである。2010年流行語大賞のトップ10ひとつに無援社会が入った。子どもを育てるのは親の責任ということ

    が親だけの責任という意識もある。そのため、子育て支援利用に関する意識の多様性を承認することに難しさがある。子育ては「こうするもの」とか、

    子ども・親は「こうあるべき」という考えを払拭していくことが必要である。支援に対する地域の風土を変えることが重要であり、オピニオンリーダーの

    必要性が高い。

    子どもが安心して暮らし、豊かに育つことが出来る街、子育てしやすい街は、すべての地域住民にとって生活しやすい街となると思う。